「Roots & Touch」とは、HULSの事業コンセプトである。シンガポールに拠点を設立したことで、日本・シンガポールいずれのスタッフとも共有できる何かが必要だと感じ、考えたものだ。
「Roots」は、人や物の軌跡を意味し、成り立ちを知ることで、工芸品への愛着を深めてほしいというメッセージが込められている。
海外で工芸品を伝えていくには、何よりもストーリーが大切になる。自分たちが外国に行き、資料館や歴史博物館などに行って、何一つ情報なく、ただ展示物だけを眺めるということは少ないだろう。工芸品も同じで、産地が生まれた背景や、独自の技法などを知ると、品々への理解が深まっていく。
自分自身も、年齢を重ねるごとに、歴史に興味を抱くようになった。昔があるから今があり、今があるから未来がある。昔のことを知ると、自分の存在が未来まで続いていく気がして、なんだか前向きな気分になれる。そんな経験も、工芸事業を始めるときの、大切な動機の一つだった。
現代の暮らしの中で、目の前にあるものがどこからどのようにたどり着いたかを、自分たちはどれほど知っているだろうかと思う。
物を売るだけが工芸の事業ではなく、その背景を知り、伝えていくことも、私たちの大切な役割の一つだということを社内で共有すべく、「Roots」という言葉をコンセプトとした。
文・写真:Yusuke Shibata