あるとき、「Nippon Colors」というサイトの存在を知った。「Nippon Colors」は、日本の色を美しいビジュアルで表現したウェブサイトであり、海外のデザイナーにとっては、日本の色を学ぶ上で、有名なウェブサイトの一つであるらしい。初めてこのサイトを見つけたときは、日本の色をこんなにも美しく世界に伝える手段があるのかと大きな刺激を受けたものだ。
工芸に関わり始めた頃から、日本工芸には奥行きがあり、「モノを作ることだけが工芸ではない」という感覚があった。例えば、工芸の素材や道具の説明は、一聴に値するし、職人の作業風景は写真集にもなるだろう。工芸には、モノを作るだけではなく、こうした様々な側面からの価値があるのだと思う。Nippon Colorsの表現は、その一つの価値として参考になるウェブサイトだった。
当時は、小倉織の縞縞と、何度も海外展開について意見を交わしていた頃だった。縞縞は、海外に事業展開していく上で、生地としての展開はもちろんのこと、小倉織が生み出す美しい縦縞の特徴を生かして、縞そのものをデザインとして展開していくことを模索していた。そんな中でHULSから提案したのが、縞を美しく見せるウェブサイト「Japan Kokura Stripe」の制作だった。Nippon Colorsの制作者に協力をしてもらえれば、これまでにない縞のビジュアル表現ができるかもしれない。そう考えた。
縞縞からも了承をいただき、Nippon Colorsの制作者の小野さんに連絡を入れてみると、制作への前向きな返事をいただくことができた。HULSは、ウェブサイトの専門企業であったし、その点では、企画の話はスムーズに進んだ。
ただし、制作は思ったように簡単には進まなかった。「Japan Kokura Stripe」は、一つ一つの柄をスキャンし、色を抜き取り、そこからデータ化をしている。さらには、生地としての本来の美しさも表現するよう、白地の生地を背景に敷くという手法も加えた。小倉織の伝統を壊すことなく、世界に向けて、新しい表現を生み出すこと。小野さん、HULS、縞縞の三者によるやりとりが納品日のギリギリまで続いた。
そうしたやりとりを経て、Japan Kokura Stripeは、2016年4月に公開された。縞縞がイタリア・ミラノで初めての大規模な展示を行うことを記念し、Milano Design Week直前での公開となった。
このJapan Kokura Stripeには、HULS、縞縞の両者の想いが込められている。
「小倉の縞を世界へ」
一つの日本文化の伝え方として、新たな表現ができたのではないだろうか。なお、このサイトの頃から、様々な企画ごとにメッセージを綴ることが自分のこだわりとなった。以前からこうしたメッセージを書くことが好きで、そんな文字表現を自分なりに行ったことも、新たなチャレンジだった。