2017年9月8日、Duxton HillというエリアにHULS Gallery Singaporeを開設した。Duxton Hillは、Tanjong Pagarという駅から徒歩圏内にある小高い丘のエリアで、木々が多く、雰囲気の良いレストランやバーが立ち並んでいる美しい景観が魅力の場所だ。
ギャラリー開設は、展示会「Artisan – Beyond Craft」の際に決心をした。目の前で工芸品に触れる人々の喜んでいる姿を見ながら、「場」の大切さを改めて感じたし、自分自身もこうした空間作りを通じて、一つの表現をしていきたいと思った。
「Artisan – Beyond Craft」の終了後より、ギャラリーの開設場所のリサーチを開始したが、場所探しには苦労をした。シンガポールは、土地の値段や家賃が世界でも最高水準の国である。スタッフ一同で方向性に迷う中、最後に信じたのは自分自身の直感だった。一人、とある休日に、どこか自分の感性に合う場所がないかとふらふらと散歩をしていて、たどり着いたのがこのDuxton Hillだった。街中にこんな静かな場所があることは知らなかったし、感動して、すぐにスタッフに連絡をしたことを覚えている。そのときには、空き家がなく、ここでのギャラリー開設は夢でしかなかったが、偶然にも空きが見つかり、無事に契約をすることができた。
HULS Gallery Singaporeは、「ギャラリー」という呼び名をつけている通り、展示にこだわった場所である。一年中温暖な気候であるシンガポールらしく、開放感のある空間を目指し、床には小石を並べ、自然感のある場所になったように思う。
ギャラリーのオープン日には、親交ある様々な方がお祝いにかけつけてくれ、仕上がった空間を喜んでくれた。お客さんのためであり、私たちのためでもあり、そして、工芸に関わる人々にとって、一つの目的地となるように。そんな様々な願いが込められたギャラリーがスタートした。