KORAI発表

2018年3月8日、HULSは日本工芸ブランド「KORAI」を発表した。このブランドの企画は2016年からスタートしていて、実に2年間もの歳月をかけて生み出したブランドだった。

KORAIの企画は、プロダクトデザイナーの辰野さんとの出会いから始まる。HULSは工芸に関わり始めた当時、海外向けの商品企画を一つの強みとしたいと考えており、そのときに出会ったのが辰野さんを紹介するウェブサイトであった。

辰野さんの洗練されたプロダクトデザインはもちろんのこと、同世代で、英国での留学経験を持ち、国際的な意識の高いデザイナーだという印象を受け、すぐに連絡をした。何度かのやりとりをするうちに、一つの商品作りではなく、コンセプトを持った独自のブランドを展開してみようということになり、この企画がスタートした。

KORAIというブランドは、「日本の涼」をコンセプトに、世界の都市に日本の涼しげな癒しを届けることをミッションとしているが、これらのコンセプトやメッセージは、辰野さん自身のシンガポールへの訪問がきっかけになっている。忙しい中で出張に来られた辰野さんは、発展の続くシンガポールの暑さの中で、息つく暇のない慌ただしさのようなものを感じたのだという。この感覚は、シンガポールだけでなく、東京やロンドンなど、それぞれの都市に少なからずある感覚なのかもしれない。そんなことから、ブランドのコンセプト作りは始まった。

KORAIの打ち合わせは、私と辰野さんを中心に、ファシリテーター、グラフィックデザイナーを交えて、毎回4時間以上の時間を費やす。時間をかければ良いというわけではないが、それだけ皆が真剣にこのブランドに取り組んでいることが何より嬉しいし、そういう熱量はきっと周りにも伝わっていくのではないかと思っている。

仕事において、人の縁は何よりも大切で、そうした縁を生み出す行動力や感性というものが今の時代には求められているような気もする。世の中には、数多くのデザイナーがいるけれど、KORAIを生み出せたのは、たった一人のプロダクトデザイナーとの出会いからであり、その縁が、ブランド発表という形で、一つの表現になったことはとても嬉しく感じる。