先日発表した工芸ブランドKORAIには、「センスウェア」と呼ばれる品がある。「Sense=感覚」と「Ware=品」を組み合わせた言葉で、KORAIでは、ブランドのコンセプトを表現したアートピースのことを指す。
私たちは、このセンスウェアという言葉を、「人々の感性に働きかけ、新たな感覚の扉を開けてくれる道具」と定義をしている。絵や演劇とは異なる、「道具」としてのアートピース。日常での手触りを大切にする工芸の世界においては、最適な用語のように思う。
KORAIの第一弾となるセンスウェアは「水の器」。プロダクトデザイナーである辰野さんが、幼い頃に触れた水鉢を思い浮かべながら、作り出した作品である。作り手は、富山県で創作活動を行う光井威善さん。二人の呼吸が重なり合い、日本的な凛とした佇まいを持つ作品となった。この器は、名の通り、水を浮かべることで、光の影が美しく底に落ちるようになっており、家の中で、陽の光や風の揺らぎを感じることのできるセンスウェアに仕上がっている。
私たちは、毎日を同じように過ごしていることが多いけれど、自然はいつでも揺らぎ、変化をしている。日本のように四季があればその変化を感じやすいが、それでも毎日を単調に感じている人は多いのではないだろうか。
例えば、毎朝、花に水をやるように、「水の器」は、自然の変化を感じるための道具だ。この器を陽のあたる場所に置いておくと、日常の小さな変化に気づくことができる。時には、草花を浮かべてあげても綺麗だと思うし、お菓子を載せてあげても良いのだけれど、やはり水を浮かべて、「水の器」として使っていただけると嬉しい。
きっと昔は、縁側の戸を開け、風の通り道を感じていたに違いない。そんな感覚を呼び起こすことができたらと思った。そんな想いから生まれたのが、このセンスウェアである。
日常の中で、日常をありのままに楽しむことができたら、どんなに幸せだろうか。
KORAIにとっては、初めての夏。「水の器」を眺めながら、夏の変化を感じてもらえたらと思う。