シェフのための特別な器

2018年9月、世界的なクラウドファンディングサービス「Kick Starter」上で、新たなプロジェクト「Plate and Planet」を発表した。「日本のテーブルウェアを世界に」というメッセージを込めたタイトルで、とても気に入っている。

第一弾の企画は、シンガポールで人気の日本人イタリアンレストラン「terra Tokyo Italian」のセイタシェフと有田の窯元集団「Arita Plus」のコラボレーション企画だった。セイタシェフは、HULS Gallery Singaporeを通じて、これまでにも何点かの器を購入いただいていたが、スターター向けの器が欲しいとのご希望があり、何度かやりとりを続けていた。

セイタシェフのコンセプトは、日本の四季をイタリア料理で表現することであり、レストラン名である「terra」もイタリア語で「大地」を意味する季節感あふれるレストランだ。おまかせコースを基本とし、その最初を飾るスターターの器は、とても大切なものであり、やりがいのある企画になると感じた。

ただし、オリジナル食器の開発には費用面での課題があった。オリジナルの形状を作ろうとすると、新たな型を作らねばならず、その費用はシェフたちにとって決して安いものではない。そんな課題に対し、クラウドファンディングを通じて、費用を集めるという案を提案させていただき、terra Tokyo Italian、Arita PlusそしてHULS、三社共同によるオリジナルの食器開発が始まった。

「Arita Plus」は7つの窯元が集まる窯元集団である。それぞれに異なる技法や特徴を持つため、セイタシェフには、佐賀県の有田を訪問いただき、一つずつの窯元を見て回ってもらった。セイタシェフにとっては初めての窯元訪問であったらしく、一つ一つを興味深く丁寧に見ていただいた。以前にシンガポール人のデザイナーをお連れしたときもそうだったが、こうしたときの眼差しは、真剣そのもので、これからどんなものが生まれるのかと想像すると、とても楽しみに感じた。

訪問の中で、セイタシェフが感じたものはArita Plusの創造性であったと言う。工芸は、昔ながらの物作りを続けている印象が強いが、Arita Plusは、シェフの要望に応え続けることで、進化を続けている。セイタシェフと同年代の作り手たちもいて、彼らとの対話は、セイタシェフにとっても大きな刺激になったのではないかと思う。

訪問を経て生まれたのは、「泡化粧」という新たな技法を施したボンボニエールだ。レストランのコンセプトである「水と大地」が表現された美しい色合いが特徴で、ボンボニエールに合わせて漣のようなプレートも作ることとなった。

私は、これらの企画の中で、全体プロデュースを行いながら、作品名を考えたり、セイタシェフの写真を撮影させていただいた。Arita Plus、セイタシェフ両者の個性を引き出すのが私たちの役割で、十分にその役割は果たせたのではないかと思う。

こうしたコラボレーションは、縁を繋ぐことが大切だと思っている。HULSを通じて、セイタさんが有田焼と出会い、そこから新たな作品が生まれる。シンガポールで活躍するシェフと作り手との出会いは、様々な縁を通じて成り立っていて、そうした縁を繋ぐことができたのが、一番の喜びに感じる。

クラウドファンディングは成功し、米国を中心に多くの国からの支援を受けることができた。完成したボンボニエールとプレートは、どちらもterra Tokyo Italianで実際に使用いただき、HULS Gallery Tokyo/Singaporeでは一般購入も可能となった。シェフのための特別な器がこうして一般家庭でもお使いいただけるというのもHULSならではないだろうか。この企画を通じて制作した映像も素敵なものになったので、ぜひ多くの方々に見てもらえたらと思う。

クラウドファンディング:“Plate and Planet”
http://kck.st/2MSlGKI

*映像がご覧いただけます。